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I LOVE LAMP ~コメディのあれこれ~

海外コメディの事を書きます。日本では紹介の少ないものを中心に。主にジャド・アパトー

フリークス学園 ~授業編~

Netflixでついに配信された『フリークス学園』。

今回は前回のフリークス学園 ~入学編~の続きから。

多少のネタバレはあるので、18話全部観てから読むことをおススメします。

もちろん、そんなキツイネタバレはありません。

 

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 第2話以降からは、ジャド・アパトー、ポール・フェイグ、ジェイク・カスダン以外のスタッフも参加する事となった。

 マイク・ホワイト(『スクール・オブ・ロック』)、ジョン・カスダン(ジェイク・カスダンの弟。『タイトル未定のハン・ソロの映画の脚本』、パティ・リン(『ブレイクング・バッド』、『デスパレードな妻たち』脚本家兼プロデューサー)など今思えば、そうそうたる顔ぶれが揃った。

 脚本会議では、脚本家を含めたスタッフたちは自分たちの学生時代の良かった事、悪かった事、恥ずかしかった事、悲しかった事などの話を会議に持ち込む事となっていた。

 それを笑いあい、時にその悲しみを共有し、彼らが経験した事がこのドラマに生かされる事となる。

 例えば、第11話『本当の友達』で、サムがモテたいがために“パリジャン・ナイト・スーツ”というベルボトムのつなぎを着て学校に登校するシーンは、このシリーズの生みの親である、ポールが実際に経験して恥をかいた話が基となっている。

 さらにリンジーが車で事故を起こすシーンもポールが免許を取って1週間で事故を起こした経験が基になっている。

 

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※次々とポールの口から語られるイケてないエピソードの数々に、ポールをカッコいいコメディアンだとばかり思っていたジャドはたいそう驚いたという

 

 第12話の『男と女の間には』でニールの父親が浮気をしている事に気付くというストーリーは、このドラマのプロデューサーのジェフ・ジュダ(第6話でニックがバンドオーディションを受ける時に音響を担当している役でカメオ出演もしている。そういえば同じ場面でポールもギターを弾いていた)の経験から。そして、ニールの夫婦仲がこじれはじめるのは、ジャドの両親が離婚した時の経験からきているものである。

 第14話『招かれざる客』で、ビルが独りさみしくグリルチーズサンドを食べながらギャリー・シャンドリングのネタをTVで観ているシーン、両親の離婚後、母親に引き取られたジャドの放課後が基になっている。

 

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 その他にも第10話『娘の日記』で、ビルが自分たちが体育の野球でいい守備位置に置いてもらえず、本当は野球がうまいかもしれないのにチャンスすらくれないと、嘆くのは学生時代のジャドが常々思っていた事。

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※体育の時間で野球のチームを体育会系の同級生が選ぶシーンで流れるのは、XTC のNo Language in Our Lungs。歌詞はこう 「僕らの肺には言葉がない 感情を伝えるための言葉がない」

 

 最終話『それぞれの道』の視聴覚クラブの先生はジャドの恩師がモデル。またニックがディスコダンスを始めるのはポールが高校時代一時だけディスコダンサーだった事が基になっている。

 このように彼らの経験が随所に生かされ今までの学園ドラマでは描かれることがなかった名シーンが次々と生まれた。

 脚本のマイク・ホワイトは、『フリークス学園』を始める前に当時大人気だった学園ドラマ『ドーソンズ・クリーク』の脚本も担当していたのだが、『ドーソンズ・クリーク』の現場で、できなかったことがここでは出来たという。その自由さはさらに広がりを見せ、第13話『ピーナツ・パニック』でリンジーが初めてマリファナを使うエピソードやケンの恋人エイミーが両性具有で生まれた事をケンに告白する第17話『それぞれの勇気』など通常の学園ドラマでは描かれないチャレンジングなエピソードが多数生まれた。

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※『ドーソンズ・クリーク

 爽やかな雰囲気だが、製作は『スクリーム』のケヴィン・ウィリアムソン

 

 自由なスタイルは、脚本だけでなく演出面でも利用された。

ジャドとポールは、キャスト達に即興での演技をさせた。

第17話『それぞれの勇気』では、セス・ローゲンジェシカ・キャンベルに自分たちでセリフを考えるよう伝えその場で演技をさせた。

 このドラマの中でも、即興演技で最も輝いていたのは、リンジーとサムの父親、ハロルド役を演じたジョー・フラハティである。彼は即興コメディの老舗劇団セカンド・シティ出身で、台詞の多くは彼のアドリブだったという。

 彼の即興に特に影響を受けたのは16話『憧れのファーストキス』でリンジーの家に転がり込むニックを演じたジェイソン・シーゲルであった。

 彼はジョーとの撮影でコメディ演技のすべてを学ぼうとしたという。

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※第3話『ハロウィン大騒動』で、ジョー・フラハティ演じるハロルドがドラキュラの格好をしていた元ネタはこれ。『SCTV』より

 

さらに、脚本術を学ぶため、ジェームズ・フランコセス・ローゲンジェイソン・シーゲルの3人は、ジャドとポールから脚本の書き方を学び、さらに3人は、台本が手元に来たら、3人で読み合わせをし、台本にある台詞やギャグを自分たちでアレンジし、撮影に臨んだ。

 このドラマはまさにスタッフやキャストが一人ひとり丁寧に作り上げた手作りのドラマになっていった。

 一見するとドラマすべて順調に見えるが、ドラマの外側では大変な戦いが待っていた。

ます、NBCの新社長にワーナードーソンズ・クリークのプロデューサーをしていた男が就任。この作品への理解を示さなかった。ポールは彼にパーティで会った時から何か不安に感じていたようだ。

 そして、第1話が放送。

テレビ誌や批評家の評価は高かったものの視聴率は伸びず、続く第2話はさらに低い視聴率になり、裏番組の『COPS』(アメリカ版警察24時)にすら負けていた。

 アメリカ人の多くは青春の情緒あふれるコメディも上裸の男が警察に襲い掛かる方が見たかったんだろうと、セス・ローゲンは振り返る。

 視聴率はNBCの数週間の視聴率で最も低い数字を記録した。

 放送していた局のNBCは、ジャドとポールに作品のトーンをより明るくすることを提案。

要はハッピーエンドを増やせという事である。しかし、ジャドとポールはその提案を拒否した。彼らがこのドラマで描きたかったのは青春の痛みや悲しみで安易なハッピーエンドにしてしまえば、台無しになるとわかっていたのだ。

 他にも局は、のジェームズ・フランコにイケメンの顔が見えないからと、ニット帽をかぶらないようにと指示するなど変な注文も付き始めた。

 第13話『ピーナッツ・パニック』の放送2日後に打ち切りが決まった。

(ちなみに第3話の『キムは友達』、第14話『招かれざる客』はNBCの放送ではO.Aすらされなかった。)